親友の系譜
ほぼ一年近く掛けてしまった第五章『告ぐ心』、これにてようやくの終了にございます。
いやぁ、長かった。話数も長さも第四章と大体同じはずなのに、とにかく手掛けている時間が長かった。おかげで、この後書きで何を語るつもりでいたのかもうさっぱりさっぱり。
ってなわけで、本当にここで語るつもりだったかどうかはもう作者自身もあやふやだけれど、オレルスの魔法理論だとかゴドランド共和国の特殊性だとかよりもこれについて語った方が(確実に作者が)楽しいので、こいつの事を語ります。
今章のオリキャラ、サウル=ハヴァー。
しかしサウルの事ばかり語ると過去編をやる時にサウル周りのネタがなくなりそうなので、サウルに代表される、簾屋的「ビュウの親友」キャラの今昔についてちょっと語りたいと思います。特に興味がない方は、ブラウザ・バックで前のページに戻るなり、一番下のリンクから目次に戻るなり、このブラウザ自体を閉じるなり、お好みでどうぞ。
簾屋はこれまで、様々なバハラグ二次創作ネタを考えてきました。ある設定をベースに細かい設定を加えて発展させたり、あるいは全く違う視点から設定を考えてそれを膨らませていったり、と手法は様々でありますが。
そのアプローチの仕方だとか設定の経路やら雰囲気やらによって、簾屋的バハラグ二次創作ネタは大体以下のように四期に分類されます。
第一期:ビュウ、旧家の長男坊ネタ。妹、弟健在、両親他界。
第二期:ビュウ、旧家の長男坊ネタ改。恐怖の八人兄弟姉妹編。父親他界、母親、祖父健在、親戚多数。
第三期:ビュウ、お貴族様ネタ。母親は元女公爵の娼婦。父親不明。サイト開設一年ほど前まで、簾屋はこのネタで二次創作をやろうと思っていた。
第四期:『心、この厭わしきもの』
現在――第四期ネタ――のサウルに当たる「ビュウの親友」キャラは、第一期と第二期の過渡期に生まれました。その頃は、ビュウの二歳上の又従兄という設定で、後に従兄に変わりました。当時は「親戚のお兄ちゃん」という位置づけに萌えていたらしい簾屋。この設定は、後に「親戚のお兄ちゃん」萌えが終息に向かってから解消されました。……それにしても何ちゅう萌えだ。
この「ビュウの親友」キャラ、名前と年齢こそ違えど、その基本的な設定は現在とは変わっていません。オレルスでは珍しい男の魔法使いで、類稀な魔力の持ち主で、ゲーム中では魔物しか使ってこないような魔法(『テレポトレース』とか)を平気で使う反則野郎で、ヨヨとビュウの家族を除くとオレルス世界で一番ビュウの事を理解している、そんな奴でした。
さて、何故こんなスペシャルさんを生み出す羽目になったか。
ビュウとはまるきり違う立場で、しかし対等な関係で付き合える男キャラが必要だった。
原作ゲーム中を見回すに、ビュウと完全に対等なキャラというのはいない気がします。
ラッシュたちナイトトリオは弟分ですし、マテライトやセンダックは「目上の人」です。
パルパレオスは、ある意味対等かもしれませんが、それでもまともに考えると、二人の仲というのは様々な――ヨヨを巡る――感情の軋轢があって相当複雑なものでしょう。相手に対し時に強くなったり時に弱くなったり、やはり対等とは言いがたい。
反乱軍の他の面子は、大体がビュウより立場的に弱い連中です。少なくとも皆、ビュウに一目置いて、大なり小なり頼っている。やっぱり対等じゃない。
ビュウがその身を置く組織が軍である以上、これは仕方のない事です。軍とは元来、上下関係の厳しいところ。反乱軍は多少その傾向が弱い面はありますが、同じ軍出身者は上官のビュウに遠慮するはず。
となれば、ビュウと対等の男キャラは、外部の人間からしか得られない。
そういうわけで、親友キャラはカーナ軍とは関係のない民間人という設定になりました。でも、ゴドランドの魔法系大学関係者という設定は今期からです。
結局のところ、軍人としてではなく、一個人としてのビュウを描くには、そういうキャラが必要だった、という事です。うちのビュウは、ヨヨの前では彼女に仕える騎士として、ラッシュたちの前では彼らを率いる戦竜隊長として振る舞います。一人の私人、二十一の小僧っ子を描くには、ビュウがそう振る舞える相手、つまりは外部の人間であるところの親友キャラが必要だったわけです。
そういう理由で、サウル=ハヴァーです。
広いオレルスの中でただ一人、ビュウみたいな外道と親友であろうとする大変稀有かつ貴重な人材です。ビュウという人間の人生を描く上で、最早簾屋はこいつを欠かす事が出来ません。何せサウルは、家族以外ではヨヨと同等にビュウと近しい人間ですからね。
このサウル、実はビュウだけでなくヨヨとも親しく、ヨヨの事もビュウに対するのと同様に、下手したらパルパレオスよりもよく理解しているのですが――まぁ、それはその内に。
本当はこの第五章でもう少しサウルを活躍させるつもりでしたが、ビュウフレのフラグを立てるのが忙しくてそれどころじゃありませんでした。えへ。
そしてそんなビュウフレはあんな感じで第五章終了ですが、一体どうなっていくのか、作者もまるで判らなくなりました。えへ。
ともあれ、そんなこんなで『心、この厭わしきもの』もようやく折り返し地点です。次はダフィラ戦です。多分次はこれまでで最長の十話編成で行く予定です。そして今までで一番長い戦闘シーンを書く事になるかと。実は『心、この厭わしきもの』に登場する無数の戦闘シーンの中で一、二を争うほどに書きたいのがこのダフィラ戦なので、気合いを入れて書く事にします。
でもって、第六章もオリキャラが乱舞します。といっても有象無象の連中ばかりです。ゴチャゴチャすると思います。でもこれまでの事で懲りたりしていないので、お読みの皆様、もうこれに関しては匙を投げてください。でも簾屋に投げつけないでください。
最後に、『告ぐ心』で使用した背景画像は、『トリスの市場』様からお借りしました。
では、ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
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