大文豪にorz

 特に何の告知をする事もなく、2005年12月15日〜24日までの間に行なわれた、謎の十日連続更新企画『夢十夜』。皆様、ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
 珍しく黒背景で何だか雰囲気からして暗かったりそうでなかったりするわけですが、ここはただの後書きですので、ここまで何の解説もなかったオムニバス『夢十夜』に関する解説をチラホラとさせていただきます。
 そんなつまらねぇモン誰が読むか、という方は、手っ取り早くAltキーとF4キーを一緒に押して、ブラウザを閉じてしまってください。おぉ、聞いてやろうじゃねぇか、という方は、このままレッツ・スクロール。






企画開始に関する言い訳

 私とは学生時代からの付き合いになるオフ友人F嬢の証言によると、『それ』は誰もが一度は通る道らしいのです。
 ウィンドウズの窓マークを押すと、『ゲーム』という項があるかと思います。

 それにハマりました。

 そして抜け出せなくなりました。

 ろくに小説が書けない日々が続きました。

 さすがに危機感を覚えた簾屋、大いに焦る。ちょっと待て自分、書くのいっぱいあるんだぞ!? パソコン開く度にマインスイーパーばっかりやっててどうするよコラ! もしかして私、これにハマったままもう小説が書けない!? 私から小説を取ったら一体何が残るって言うんじゃこの野郎ぉぉぉぉぉっ!

 ――そんな危機感を抱いたある日の真夜中。私は一つの決心をしました。

 そうだ! 一日一本ひたすら短くても文章を書いて、リハビリすりゃいいじゃんゲームに目ぇくれないで!


 つまり、『夢十夜』はリハビリでした。ゲームをしようがしまいが、とにかく一日一本書く――そんな課題を自らに与え、それをやり遂げようとしたわけでした。
 実際、『夢十夜』連載直前には十本書き上がっていたのです。まぁサイトに上げるのも、十本確実に書き終えてから、と決めていたわけですから、掲載前に仕上げるのはある意味当然なのですが。
 とりあえず、十日連続で十本書ける事は判明しました。総合的な出来が良かったかどうかは別として、今のところは書けるだけで良しとします。書けなくなったら死ぬしかねぇよ、私。


『夢十夜』について

 旧千円札の大文豪、夏目漱石。その著作の中に、『夢十夜』という短編があります。語り手が見た奇怪な十の夢の話なのですが、今回短編十本を書くに当たって、その手法だけをお借りしました。
 だから本当は、夏目先生の『夢十夜』みたいに不思議で奇怪なホラーテイストにしたかったんですよ。でも……おかしいなぁ、何でこんな中途半端な出来になっちまったんだ? そして冒頭のタイトルに戻る(笑い)。

 元々キャラ一人の夢を十本、というのは出来ないだろうな、と分かっていたわけですから、ビュウとヨヨの夢を交互に書く、という形でやってみました。奇数はビュウ、偶数はヨヨです。一人称の上に固有名詞がまるで出てこないところが何とも言えず「これ本当にバハラグかよ!」とお叱りを受けそうですが、そこに関しても冒頭に(以下略)。

 では、各話の解説というか言い訳をザッと。


第一夜『地獄行』、第二夜『煉獄行』

 ビュウとヨヨの死生観というか、死後観に関する話。
 煉獄というのは、アレです。天国に行くか地獄に行くかあやふやな魂どもが、最後の審判を待つ待機所ですよ。
 うちのビュウはあっさり地獄行きを選びそうですが、ヨヨ様は割りとふてぶてしく煉獄にいそう――

 いえ、スイマセン。本当はただの語呂の問題だったんです。第一夜と第二夜で同じタイトル、ってのはあれだったんで。

 それはさておき。
 空に浮かぶ浮島の世界、オレルス。うっかりラグーンから落ちようものなら青いお空にまっ逆さまでレッツ・ゴー衰弱死まっしぐら。
 そんなわけで、オレルス世界全般での「死後の世界」というのは、もしかしたら果てのない、行きつく先のない、どこまでも真っ青な空なのかもしれません。そこをずっと落ちてどこにも墜落しない、というのは一つの永劫の責め苦。
 もしそうだとすれば、空をボケッと見ていたり空の果てに興味を抱くビュウというのは、傍から見れば、死後の世界やその先をやたらと気にする、頭だけは彼岸に片足突っ込んだちょっと危ない人なのかもしれない……(ビュウスキーの皆様ごめんなさい)。
 転じて、オレルス世界の「天国」は、どこまでも永遠に続く、決して落ちる事のない大地なのかもしれない。空が地獄で地面が天国、というのは、私たちの彼岸観とは逆転していますが。


 第三夜『天上の神』、第四夜『地上の神』

 天上の神、地上の神、という概念は、平谷美樹の『エリ・エリ』、『レスレクティオ』、『黄金の門』の三部作から拝借しました。
 天上の神というのは、ユダヤ教、キリスト教の父なる神です。一方での地上の神とは、キリスト教のイエス・キリストのような、いわゆるところの救世主という奴です。
 我が家のビュウ隊長は無神論者ではないですが神様に頼る気持ちというのははなから持っていないので、そもそも当てにしません。一方でヨヨ様は、一種の宗教国家カーナの姫君なわけですから、帰依する気持ちはビュウより強いかと思われます。

 というか、すみません『地上の神』は脳内が混線したため、一次創作のオリジナルキャラにご登場願いました!

 庭師の坊主は一次創作のキャラです。目の色は書かなかったのでオフ友人の皆様(って言うか、オフ友人連中でこれ読んだ奴いるのか?)にはどいつだか分からなかった方もいるでしょうが、アイツです。2005年制作投稿用オリジナルに登場した裏主役、簾屋的通称「庭師王」です。私がわざわざ「収まりの悪い黒髪」と表現する髪の毛の持ち主は、奴しかいません。
 ついに二次創作にまで進出してしまったあの坊主。下手にバハラグの世界にご登場願ったら最後、神竜とサウザーとヨヨ様とビュウを自分の前に並べて正座させて、人道や世界平和についての説教を始めかねません。……世界のパワーバランスが一気に崩壊するわ、こりゃ。
 ちなみに、「地上の神」の作中で「救世主」の寓意とした出した「庭師」。キリスト教象徴学での「庭師」は聖母マリアの事なので、実は思いっきり間違ってます。ですが、別にキリスト教の話でもないので、庭=世界を整える庭師=救世主、という感じで取ってくださるとありがたいです。まぁ、この話のモチーフが平沢進の『庭師KING』だから仕方がないのですが……。


第五夜『食べる』、第六夜『笑う』

 これまでシリアスタッチで書いてきたのに何故か急にギャグに走った第五夜と、シリアスはシリアスだが趣味に走った第六夜。どちらも「生」についての話です。
 ビュウとヨヨの「生きる事」の象徴。となれば、ビュウは金勘定、ヨヨは策略――しか思いつかない何か間違っているバハラグ二次創作作家は何を隠そうこの私。
 で、ビュウの金勘定は元々自分の食生活の安定から来たものなので、奴にとっての生きる事はすなわち食べる事、だと気付きました。当サイトの設定では幼少期傭兵だったビュウだから、何日も食べられない事や粗食は日常茶飯事だった事でしょう。蛇くらい炙れば平気で喰らう男です、奴は。
 一方のヨヨ様。宮廷という権謀詐術の渦巻く場所を家庭としてきた彼女は生来の策略家、というのが簾屋的設定。顔は笑って頭脳は策謀、なんていう表と裏の二重構造は我が家のヨヨ様にとっては最早デフォルト。策略を練る時に浮かべている彼女の笑顔は、きっと生き生きとしている事でしょう。
 ……それにしても、ホント、ヨヨ様に関してはオリジナル設定は入りまくりだなぁ。


第七夜『愛し君』、第八夜『彼方の貴方』

 ラブです。やっとラブな話です。
 第七夜『愛し君』は随分手こずりました。おそらく、全十話の中で一番手こずったのでは? 手探り状態で一度書き上げ、その翌日、全部消して書き直した、という荒業をやってのけました。だから、上げた『愛し君』と『彼方の貴方』は、同じ一日で書いた代物、という事になります。
 最初の『愛し君』は、近所の病院に入院している少女との恋物語で、彼女の死後も思い続けてバイオリンを弾く――とか何とか、まぁそんな話でした。でも何かしっくりこない。
 ちょうどその時、NHKスペシャル『赤い翼』がやっていた。新シルクロードの撮影ドキュメントだったのですが――
 中国青海省の青海湖での撮影シーンを見ていて、閃く。

 よし、空で行こう!(実話)

 ってな感じで、あんな話になりました。
 一方第八夜『彼方の貴方』。よくよく考えると、これ、エロですね。まぁ……こんな感じです、ヨヨ様の恋愛は。パルヨヨ派の皆様、ごめんなさい。我が家のパルヨヨは、微妙に勘違いとすれ違いなのです。


第九夜『エデン』、第十夜『ユートピア』

 まずはタイトルの説明から。
 エデンというのは、ご存知、旧約聖書でアダムとイヴが叩き出された楽園です。
 ユートピアというのは、理想郷という訳語が適当でしょうか。ところでこれはギリシア語の造語で、そちらの原義は「どこにもない場所」だとか。

 それらを踏まえて。

 パッと見は同じの『エデン』と『ユートピア』ですが、実はちょっとずつ違います。もう一度読み返してみると、何か発見がある……か?


最後に

 いやぁ、それにしても長々と。書いた話の解釈なんて読者に丸投げでいいじゃないのよぅ、と思ったりもするのですが。
 ともあれ、こんなバハラグかどうかもあやふやなオムニバスでしたが、今回の十日連続更新企画でまだまだ書けると判明したので、読者の皆様、これからも簾屋を「早く小説書けー」とせっついてやってくださいませ。
 では、ここまでお読みくださり、ありがとうございました!

 

 

 

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