こんな夢を見た。



 私は十四歳だった。
 そして、懐かしいあの城の、懐かしいあの練兵場に面する渡り廊下に向かって歩いていた。
 その手すりに、彼はもたれていた。
 彼もまた、私と同じく、十四歳だった。


「はぁい」
「よぉ」
「こんな所で何のんびりしてるのよ。サボり?」
「違ぇよ。別件で出掛けてたから、次の演習から参加するだけだ」
「下手な言い訳。もう少しマシな事言えないの?」
「ほっとけ」
「まぁ、それはさておいて」
「置くのかよお前は」
「姉さん、結婚するんだよね」
「あぁ――って、何を今更」
「いいじゃない。それで、私たちからも結婚祝いって、贈った方が良いのかな?」
「はぁ? 良いだろ、そんなの。必要ねぇよ」
「そぉ?」
「逆に気ぃ使わせるだ、俺たちから贈ったりしたら」
「そうなの?」
「そうだよ」


 それから、私たちは同時に空を見上げた。
 太陽がやたらと眩しかった。光を遮るものは何もなく、燦々と降り注いでいる。渡り廊下のすぐ側の立ち木の葉にその光はあたり、明るく鮮やかな翡翠色に煌めいた。吹く風に葉の群れがサワサワと揺れて、さながら緑と光の乱反射だ。その鮮烈でありながらも柔らかな美に、私は思わず目を細める。
 鳥が啼く。兵士たちが檄を飛ばす。それはどこか別の場所での出来事のように、遠くに聞こえる。


「……平和だな」
「そうね」


 そんな、夏のある日の事。

 

 

 

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