『体は正直』

分かっている。分かっているのだ。彼はそうではない。分かっている。なのに冷や汗が出る。顔が引きつる。体が震える。何という事だろう、彼は同志なのに。「それで祝家荘の状況だが……ん? どうしたんだぜ呉用殿?」「いえ、別に……」呉用は彼から目を逸らした。だから、時遷は蛙ではない。

 

『青痣の異端児は江湖を行く』

馬鹿馬鹿しいでしょーよ。「建国の功臣」とか言っても、楊家って外様よ? 降将よ? 偉いもんじゃないわけよ。だから家名を背負って禁軍にいるより、江湖を渡り歩いて強い奴と戦いたかった。なあご先祖様、あんたらは怒るかもしれねぇけど、俺ぁ生き方も死に方も自分で好きなようにするぜ。

 

『中華で一番お姫様』

戴宗さん、右手が寂しいです。「なら手を繋ぐか、翠蓮」甘い物が欲しいです。「じゃあ、あそこの店で点心を買ってくる」下りられません。「仕方ないな……今行くよ、お姫様」そう素敵に微笑む戴宗さん。ああ、何て「あり得ないんですけどー!?」自分のツッコミで目が覚めました。

 

『落第書生に捧ぐ哀歌』

呉用君、科挙を受けた事は? と聞かれた。「ありませんよ」「どうして?」「馬鹿馬鹿しいじゃないですか」すると朱貴は、腹を抱えて大爆笑した。「馬鹿馬鹿しい……やー、呉用君の言う通り」と、目尻に浮かんだ涙を拭い、「あの人も、そう割り切って笑い飛ばせば良かったんだよ」切なげに目を細めた。

 

『エキセントリック・ガール Part.1』

「やー、扈三娘ちゃんの食べっぷりはいつ見ても気分いいね」「何よそれ、貶してんの?」「いいえ褒めてんの。私が好きだった子そっくり」「え?」「あの子も、私の作った料理を美味しい美味しいって食べてくれたよ」「朱貴さん……――恋愛、出来たんだ」「突っ込みどころが違うのよね、扈三娘ちゃん」

 

『エキセントリック・ガール Part.2』

「で、その人とはどうなったの?」「駄目だった。私は結婚したかったし、向こうもその気でいてくれたんだけど、色々あったんだよね。結局私は山賊になって、彼女は他の男の妻になったって聞いたよ」「朱貴さん……相手、女の人だったの!?」「思考がエキセントリックなのよね、扈三娘ちゃん」

 

『エキセントリック・ガール Part.3』

「なら朱貴さんって一応フリーなんだ」「ニハハ、まぁね」「じゃあ私と結婚して!」「……自分が何言ってるか分かってるかい?」「もちろん! だって朱貴さんの奥さんになれば美味しい物作ってもらい放題の食べ放題じゃない! 最っ高!」「君が私をどう見てるかよく解ったのよね、扈三娘ちゃん」

 

『喜び余って怒り百万倍』

「豹子頭、私、結婚するかも」「君が? 誰とです」「王英」答える声に苦さが混じる。王英は、女好きだけど悪い奴じゃないし、私を好きって言ってくれた。でも……「――やめなさい、扈三娘」「豹子頭?」止めてくれるの? 「君みたいな大食いと結婚しては彼が可哀相です」ムカついたので湖に投げた。

 

『届きそうで届かない』

「朱貴さんって奥さんいたの?」「やー、意外そうね」「うん。で、どんな人?」私は内心喜んでいた。この人は、ちゃんと人を愛せるんだ。「君によく似てたよ。よく笑って怒って食べて……手のかかる、放っとけない子でね」と、切なげに笑う。「だから、彼女だけで十分なのよね」私はこうして失恋した。

 

『君が死ぬ夢を見た』

「……晁蓋」「どうした呉用、辛気臭い顔して」「君が、死ぬ夢を見た」「お前も?」「は?」「私もです」「わしもだ!」「ぼ、僕もです」「Me too」「俺も!」「やー、私もなんだよね」「私も。もう最っ悪」「わ、私も」「俺もだ笑えねー」――敵宿星の攻撃(嫌がらせ)である事が判明しました。

 

 

 

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