絵が描けるなら漫画でやりたかったネタでした



 各話冒頭と第四話ラストのシーンを。まあ、簾屋は絵師ではなく文字書きなので小説でしか表現できないのですが。

 そんなこんなで2010年戴宗誕記念中編『ハッピーデイズ』、お付き合いくださりありがとうございます。
 戴宗さんのそれぞれの年代の誕生日(もしくはその前後の日)の様子をオムニバス形式で描いてみました。正確な年代としては、第一話が戴宗さん八歳か九歳か十歳の誕生日、第二話が生辰綱強奪直後、第三話が十八歳だか十九歳だかで、第四話が二十代前半、ってな感じです。全然正確じゃねぇ。
 ところでまったく以ってどうでもいい事なのですが、本編中の戴宗さんは何歳なんでしょうね。一巻で張青が「あいつももう十六だろ」と言っていましたが、この「もう十六」って「十六歳になっている」とも「もうすぐ十六歳になる」とも取れますし。でもって、本編の季節は初夏、蔡京に誕生日プレゼントを贈る前だから(原典では、蔡京の誕生日は六月十五日です)、おそらく本編開始の正確な年代は1112年の四月から五月ではないか、と思われます。つまり、1112年の戴宗さんの誕生日はまだ来ていない。
 つまり、1112年に戴宗さんは十六歳になるのか十七歳になるのか。どっちか分からなくて、上記第二話の年齢は書いてません。どっちなんでしょうね。でも大多数の人からそんなの関係ねぇと小島○しおばりの突っ込みが飛んできそうです。


 戴宗さんについて。
 戴宗さんは、生い立ちこそ色々不幸ですが、実はとても幸運で幸福な子ではないか、と簾屋は思っています。
 Webアンソロ『百八星繚乱』に提出した中編にもチラリと書いた事ですが、この時代、親という庇護者を失った子供の末路はマジで悲惨だそうです。売り飛ばされて当然、よしんば親戚に引き取られたとしても、そこで奴隷同然の扱いを受けても文句は言えないそうな。
 戴宗さんはそんな事にはならず、洪信パパという新たな庇護者を得てそのまま普通に暮らせました。
 そして洪信パパが死んでしまってからも、宋江さんたちのように家族として扱ってくれる人々がいたり、小五という友達がいたり(これについては簾屋の色眼鏡がちょっと入っていますが)、林冲さんたち仲間がいたり、翠蓮ちゃんという恋人がいる(ノーマルカプ厨補正)。
 これはおそらく、北宋末期の地方出身者という来歴からするととんでもない幸運ではないかと思います。だって戴宗さん、自分の敵の事しか見えていないけれど、周りを見渡せば自分の事も考えてくれるたくさんの人がいるんだから。
 そんな戴宗さんの幸せを書いてみたかった。『ハッピーデイズ』は、まあ言ってみればそういう話です。


 戴翠について。
 2010年翠蓮誕中編の後書きで「戴翠成立までの軌跡」を書きましたが、この小説はその軌跡をガチに描いたらどうなるか、という話でもあります。だから第一話『家族』、第二話『親友』、第三話『仲間』です。こいつらとの関わりを経ない事には戴翠の成立はあり得ない、それが簾屋の信念です。自分でも厄介な信念だと思います。
 ともかく、自分を大切に思う人たちと関わり、その思いを受け入れられるように初めて、誰かを大切に思い、大切にする事が出来る。
 そんな戴宗さんが書きたかったなぁと思うんですが、何か色々描写を省略している気がする。って言うかこの話ってその軌跡をなぞらえただけで家族と親友と仲間を受け入れたところを描いた話ではないような。何てこった。
 でも友情パートについてはちゃんと書きます。簾屋は多分、男同士の友情に何か色々夢見てるので。


 そんなこんなで『ハッピーデイズ』、これにて終了でございます。
 これ以後の戴翠がどんなラブな事になるのかワクワクドキドキしつつ、皆様、ここまでお付き合いくださりありがとうございました!

 

 

 

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