祝家荘戦をやりました。後悔はしていない



 いやホントに。

 というわけで2010年扈三娘誕記念中編『Calling』、ここまで長々とお付き合いくださりありがとうございました。
 明星原作では独竜岡のどの字も祝家荘のしの字も出てこなかった原典の中でも屈指の大イベントの一つ、祝家荘戦ですが(ちなみに他の大イベントとしては、智取生辰綱、武十回、宋江さんの江州流罪、vs呼延灼・連環馬などがあります)、原作でやっていないのをいい事に好き勝手やりましたごめんなさい。
 しかし祝家荘戦自体がメインではなく、祝家荘戦で繰り広げられた林扈がメインなのは、二次創作書きとしての最低限の礼儀です。


 さて、林扈を語る状況設定として祝家荘戦をチョイスしたのですが、明星原作でやられていない物語なので、明星原作・原典・北方水滸・三巻嘘予告を元にした簾屋の妄想設定がかなーり入り乱れています。
 まさかこんな辺境サイトをご覧の方で単行本をお持ちでない方はいらっしゃらないとは思いますが、念のため、どの設定がどうなっているのか思いつく限り列記します。

 ・扈三娘には双子の妹がいて、そちらが本物の扈三娘――明星公式設定(三巻嘘予告より)
 ・『2.誰も知らない』で記述した扈三娘の過去――嘘予告を元にした簾屋の妄想
 ・扈太公、扈成などの扈三娘の家族、または祝彪以下祝家の連中――原典公式
 ・『3.喉が裂けても』で記述した、独竜岡三荘の役割分担と力関係――原典設定を元にした簾屋の妄想
 ・祝家荘戦勃発の発端――北方水滸から影響を受けた簾屋の妄想
 ・扈三娘は妹の身代わりになって云々――嘘予告を元にした簾屋の妄想
 ・日月双刀にまつわる話――「双子の妹との唯一の絆」までは明星公式(三巻嘘予告より)。そこから先(日の刀と月の刀の重さの違いや、それを元にした林冲の推測)は全て簾屋の妄想

 えー……多分、こんなものではないかと。
 ちなみに梁山泊軍を晁蓋さんが率いている事についてですが。
 原典では祝家荘戦の総司令官は宋江さんですが、ここではわざと晁蓋さんにしました。というのも、何か明星の宋江さんと晁蓋さんのイメージって、どちらかと言うと北方水滸に似ているんですよね。先頭に立って戦いたがる晁蓋さんと、割とお山にこもっている宋江さん。原典じゃあ曽頭市以外の戦闘は全て宋江さんが指揮を取ってるんですけど。
 天野洋一先生がツートップの役割分担についてどう考えていらっしゃったか、もう私たちに知る機会はないのでしょうが、「基本的に晁蓋が実戦指揮で宋江は思想的指導者、曽頭市以降は宋江が泣く泣く兼任」とするとイメージ的にも物語的にもしっくり来るので、そんな感じにしてしまっています。



 ではそろそろ、本題の林扈について。
 とは言っても、この話では林扈はまだ始まっていません。『Calling』という物語は、林扈が始まる下地が出来る物語です。
 簾屋的戴翠同様、これにも一応理由がありまして――
 林冲さんも扈三娘さんも、戴宗さん同様、明星が終わった直後辺りでは恋愛に意識を向けられる精神状態にはないのではないかなー、と思いました。
 扈三娘さんについては、説明するまでもありません。双子の妹である本物の「扈三娘」、生まれてすぐに捨てられたという設定、原典から読み取れる独竜岡三荘のパワーバランスや祝彪という許婚の存在などを考えると、扈三娘さんは自分で好きな男を見つけて結婚する、という事は出来ないのではないかと考えられます。捨てられたはずの彼女が妹の名を名乗っていたり、嘘予告内における妹の「そして今も私のために」という発言を鑑みると、扈三娘さんは妹のために自分を犠牲にするような状況にある、と妄想できます。
 そんな彼女が周りにいる男に意識を向ける余裕があるか。否! そんな風に浮ついている場合じゃない! 日月双刀を取り返したらさっさと梁山泊を出なきゃ! ――三巻加筆分の発言も含めて、三娘さんがさっさと逃げ帰りたがっているのが読み取れます(妄想できる、とも言いますね)。
 で、一方林冲さん。
 こちらは自分が抱えていた問題の一つ(王進様、開封府にて命を狙われる事)が解決したのでまだ余裕はあるでしょうが、それ以前の問題として、彼にはクリアしなきゃいけないものがあります。
 そう、親離れ
 王進様に精神的にベッタリ依存していた林冲さんは、それを離れ、自分一人で立てるようになって初めて、異性に目を向ける事が出来るのではないか?
 では親離れのイベントはいつ、どこで? ――決まってます。三巻でフラグが立ってたじゃないですか、華州行き! 史家村に身を寄せる王進の様子を花和尚と一緒に見に行き、(嘘予告によれば)そのまま少華山イベント発生(あれですね、三頭領の一人・陳達氏がよその県の食料庫を襲いに史家村を通ろうとしたら史進に阻まれて何やかやあって史進少華山入り、ってイベント)、林冲さんも立ち会ってまったく一体どうする気だったんでしょうね天野氏は!
 ともあれ、ここで林冲さんが親離れすればいい、と簾屋は思いました。
 で、三話でそんな事をチラリと喋らせました。
 本当は林冲さん親離れのくだりを自分で書いてみたいのですが、今回祝家荘戦をだしにして林扈を書いたのとはわけが違って少華山イベントをガチで書かなければならず、それは二次創作の領分を越えているので簾屋は絶対にやりません。やるんだったらおとなしく一次創作でやります。
 ともあれ、親離れする事で林冲さんは一回り成長し、自分を客観視し、他人の状態をよく見る事が出来るようになるのではないか、と考え――最終的にこんな話になりました。
 どちらがどちらを先に好きになった、とかではなく、徐々にお互いがお互いを同じように想い合うようになって、そのまま惰性でどうこうすればいいよ、うん!



 そんなこんなで『Calling』、これにて終了にございます。
 呼ばれる事で自分の名前を見出した扈三娘さんがこれから林冲さんと傍から見ていてじれったくなるような恋愛を繰り広げればいいよ、と思いつつ、皆さんここまでお付き合いくださり本当にありがとうございました!

 

 

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